自分が足りない。
もっと自分がいたらもっと楽に生きれるのに。
ひとつの顔、ひとつの脳みそ、ひとつの体。
たった一人だからこそ抱えきれずに悩む。
自分で自分が面倒。
厄介でしょうもない生き物。
ホラーではドッペルゲンガーは怖ろしい存在だけれど。
私は時々自分を変わってほしいと思う。
むしろ、街で見かけたら嬉しい気がする。
「her/世界でひとつの彼女」も、もし存在する相手だったら嬉しすぎただろうけれど。
スパイク・ジョーンズ監督らしい切ない恋の物語。
近未来なSFラブ。
でも、すでにこんな時代はすぐそばにある気がする。
人工知能型OSという架空の声の主。
傷ついて弱ってしまった心に入り込んだ生身ではない恋。
人はなぜ恋をするのか。
人は何を求め生きているのか。
寂しさや空虚さでいっぱいな現代人にだからこそ響くものがある。
私の携帯は時々私に話しかけてくる。
一体どこを押したらその機能が使えるのかが全く分からない。
どうやら私が誤作動を起こしているようなのだ。
話しかけるときちんと答え、望んだものを検索してくれる。
実に不気味。
なのでほとんど使わない。
携帯に話しかけるより自分で検索することに意味がある気がするからだ。
この"her"はその恋愛版。
姿も形も心もないけれど、自分が求めている温かさをくれる。
いや、もらえていると信じれるのだ。
それは、ある意味機械だからこその信頼。
生身の人間であればそこまで素直に信じることはできないだろうから。
架空恋愛でも幸せを感じ、自分を変える力をくれるならば否定はしない。
たとえ、ニセモノであっても変われた自分は偽物にはならないから。
だけど、やはり気持ちが悪い。
不気味でしかない。
それに没頭し入れ込みすぎるのは異常に見える。
その先には結局虚しさしかない。
一生会えることも、触れることもできない恋愛は不健康でしかないからだ。
そして、自分の頭の中で自分勝手に創りだせるのは妄想にすぎないからである。
望みどおりにいかないからこそ人は傷つき、苦しむ。
それを煩わしいとか不幸だと言って逃げてばかりいれば、その分本物の幸せを感じることもできないだろう。
まずは自分なんだよなぁとつくづく思う。
結局、人間は一人では生きていけない。
瞳を見つめ、肌に触れ、互いに語り、一緒に時をともにする。
家族であれ、恋人であれ、友人であれ...
人間と人間のつながりなしではすべてに意味がない。
私も趣味に没頭しすぎてキモ子にならないように気を付けねばと思った所存です。
ちぶ~的セクシーボイス度5