お気に入りの靴がある。
季節ごとに違う靴。
次のシーズンまでうまく保存できればいいけれど。
保管の仕方が悪くて、もう履けなくなることもしばしば。
靴を磨くのは、同じ靴をまた履くため。
同じ靴でも行先は違う。
「ル・アーヴルの靴みがき」 のように同じようで同じじゃない人生。
繰り返される日々に変化が起きた時こそ、人間は強い。
あらすじ.....
昔パリで暮らしていた芸術家のマルセル(アンドレ・ウィルム)は、今は港町ル・アーヴルで靴磨きをしながら生計を立てている。彼は自分に尽くしてくれる妻(カティ・オウティネン)と愛犬ライカとの暮らしに満足していた。だが、ある日妻が病気で入院した後、アフリカからの難民の少年と出くわし、警察に追跡されている彼をかくまうことにする。
フランスの映画はどうしてこんなにもオシャレなのか。
きれいごと映画が大嫌いな私ですらすんなり受け入れてしまった夢のような奇跡。
いい人しか出てこないありえない出来事。
全く嫌みがなくてサラっとこなされてしまう。
この敗北感はなぜか心地がいい。
まるで油絵を見ているかのような感覚。
単調なようで繊細な色使い。
淡白なのにどこか暖かい感触。
静かな油絵が動き出す絵本のような世界を見た。
靴磨きは時代とともに消えゆく職業。
それとは反対になかなか終わることのない移民問題。
法律とは所詮人間のつくりもの。
人間としてそのルールが本当に正しいのかは別物。
人情あふれる街人たちは、それぞれこの国で懸命に生きている。
だからこそ助けを求めている人には躊躇せず手を差し伸べる。
今までそうしてもらってきたように。
なんの葛藤もなく当たり前のように善意溢れる行動をする。
稼げる仕事でもないし、贅沢な生活を送れるわけでもない。
それでも自分たちのできることをして精一杯生きている。
そうすればいつか簡単に奇跡が起きる。
そうでなければならない。
そう思いたいじゃないかという監督の強引さに驚かされる。
「え、うそでしょ」と声が思わず出てしまうようなハッピーに包まれる。
この幸せを信じたい。
たまにはそう思える映画もあっていい。
ちぶ~的かわゆす度5
ここには若くてピチピチな子はいない。老いぼれてるけどどこかかわいい人ばかり。こんな風に年をとりたい。