おっと。
こりゃサプライズ。
ロマンティックな方じゃないサプライズ。
普通の感覚の持ち主であればありえない異常な事態を、めっちゃポジティブに捉えられる人がいる。
こちらにしてみれば、ドン引き。
その人の前向きな解釈がありえない。
つい、二度見。
世の中には、自分が生理的に受け入れられないことを平気で受け入れられる人がいる。
それはある意味洗脳とか、思い込みのせいなんじゃないかとも思う。
「コンプライアンス 服従の心理」みたいに、その状況自体に疑問すら持たないのだから怖い。
あらすじは...
トラブル続きの金曜日の朝、アメリカのファストフード店店長サンドラ(アン・ダウド)は仕事でてんてこ舞いしていた。そこへダニエルズ警察官(パット・ヒーリー)と名乗る男性から電話が入り、店員のベッキー(ドリーマ・ウォーカー)に窃盗容疑が掛かっていると告げる。サンドラは彼の指示に従い、ベッキーの身体検査をすることになり……。
2004年にアメリカのファーストフード店で実際に起きた事件を映画化。
無実の罪を着せられ追い込まれた従業員。
顔の見えない電話の主である自称警察官の男の言いなりになってしまった者たち。
信じるということ。
思い込むということ。
この二つの心理が作用する悲劇。
主観と客観の壁がなくなる。
そこに、人間の恐ろしさを知る。
普通であれば気づけるはずの異常。
密室に追い込まれた心理。
せっかくのこの題材を、繊細に描けなかったことが非常に残念。
だが、やはりこの事件自体が実際に起こったものだということがすでに興味深い。
なぜ、だれも気づけなかったのか。
目の前にいる人物よりも、電話の向こう側の人間を信じてしまったのか。
そこには人間の無意識な思い込みや嫉妬心が原因にある気がする。
若くてモテる女が自分の世界で輝いている。
かたや、中年で仕事も男にも切羽が詰まっている女。
ビッチだったら悪事を働いていてもおかしくないというレッテル。
服従したのは、単なる心理の誘導だけのせいではないのではないだろうか。
人間の。女の。コンプレックス。
ただ、火がついただけ。
すでに火種は用意されていたのだ。
素直に従うのはバカだからじゃない。
そうせざる負えなかった状況に陥る。
追い込まれれば追い込まれるほど自分の身を守ろうと必死になる。
否定することよりも肯定して受け入れる方が楽になる。
それしかないと思い込む。
立場的な弱さから逃げ場を失ったのだ。
この事件を客観的に見れば到底信じられない。
自分だったらそうはならないと誰もが思うだろう。
だが、そこが本当に怖いのだ。
実際にこの事件は、アメリカでは多発したらしい。
ありえないと思えるようなことが普通に起こっているのだ。
近くにいることで何もみえなくなる。
少し距離を置いたことでその服従の呪縛が解ける。
同じものも見ているのに、見る位置で見え方が変わる。
そもそも人間は自分の思い込みで人を判断している。
大っ嫌いな奴も実はただの不器用な奴ということも無きにしもあらずかもしれませんね。
ちぶ~的女の心理度5
淡々としすぎているが、店長のひがみがちょいちょい出てて怖くなる。あっさりと描かれているが見ようによってはネチネチしているかもしれない。