昔から余計な記憶は残さない主義である。
というか勝手に脳みそがその記憶を奥底に追いやる。
つらい過去ほど忘れたい。
つらいことがあったことは覚えていても詳細や名前、場所なんかは一切覚えてない。
これだから楽天主義はお気楽に生きれるのである。
過去にこだわる時間がもったいない。
だけども、人は過去で現在が成り立っている。
「遠くでずっとそばにいる」を見て、もし自分の記憶が10年分抜け落ちたら.....と見終わった後も考え込んでしまった。
あらすじは....
交通事故の後遺症によって、10年分の記憶を失った志村朔美(倉科カナ)。実年齢は27歳でも、17歳までの記憶しかない朔美は、自分を取り巻く変化に困惑しながらも現状を受け入れ生活していたが、空白の10年間の出来事が気になって仕方がない。付き合っているらしい男(中野裕太)や高校時代の同級生(伽奈)らの助けを借りて、喪失した記憶をたどろうとする朔美だったが……。
自分が住んでいる場所が映画にある。
それがこんなにも絶大なパワーを持つとは...
普段なら絶対に見ない系。
だけど、秋田人がこれを見ないでどうするんだ。
あの駅もあの道もあの建物もぜ~んぶが秋田人のもの。
秋田がずっと香っている。
美しい風景。
印象的な映像。
どれも秋田から創られていることに驚き、感動するミステリードラマ。
失われた記憶を秋田で辿る。
忘れたかった過去。
忘れたくない思い出。
静かに拾い集めていく記憶。
どうしてだろう。
ストーリーに意外性も斬新さもないのに。
自然に涙がこぼれた。
いつもだったらこんなことにはならないのに。
見慣れた風景が私を映画の中に連れ行ってくれる。
まるで自分のことのようで切なさが込みあげた。
朔美演じる倉科カナの無邪気で天真爛漫な素直さがとてもよかった。
見るものを惹きつける魅力がいっぱい。
ふんわりと爽やかに演じてた倉科カナには、ありがとうと言いたい。
恋人役の中野くんには、キュン死にしそうだった。
舞台を秋田にした監督は、だれが言おうと何と言おうと名匠です。
誰の人生にでもある抹消したい過去。
やり直したいあの時の選択。
だけど、時間はいつも平等で戻すことはできない。
知りたくない10年後の自分。
葛藤と戸惑いが入り混じる。
人は10年という月日で変わり、失い、それでも生きていく。
自分の10年前を思い出してみる。
夢はなんだっただろう。
好きな人は誰だっただろう。
好きな食べ物はなんだっただろう。
きっと、ほとんどが変わっただろう。
でも、ずっと変わらないものもある。
社会に入り、さまざまな人と出会い、経験して成長した自分。
10年前にはあった純粋さはなくなり、ズル賢いことばかり身についたりして....
だけれども、それがあっての自分。
今は今を生きる。
生き続けることに価値がある。
朔美と同世代の女子は、走り続けて疲れるお年頃。
そんな時は朔美みたいに秋田の大地を感じ、静寂に耳を澄ませる。
この憂鬱さもいずれどこかに繋がる幸せの鍵かもしれないじゃないか。
と、いつもの楽天主義を発揮して。
ちぶ~的秋田にキター度5
いつも行くスタバが映ったときの感動!いつも歩いている道を演者が歩いたという事実!今度からはもっと秋田を大切に使いたいと思います。