私の故郷には海があった。
近くにあるとありがたみなど感じないものだが離れていると海が恋しくてたまらなくなるときがある。
今はちょっと悩んだりすると思うのだ。
海を眺めて一人で突っ走ったら爽快だろうなぁとか。
浜辺の香りに癒されたいなぁとか。
あの青さと広さに頼りたくなったりして。
まぁ、きっとないものねだりなんだろうけれど。
「海と毒薬」の海のシーンは癒されるというよりも不気味さが漂ってますけどね。
解説...
太平洋戦争末期に実際に起こった米軍捕虜に対する生体解剖事件を描いた遠藤周作の同名小説を、社会派・熊井啓監督が映画化した問題作。敗色も濃厚となった昭和20年5月。九州のF市にも毎晩のように米軍機による空襲が繰り返されていた。医学部の研究生、勝呂と戸田の二人は物資も薬品も揃わぬ状況下でなかば投げやりな毎日を送っていた。そんなある日、二人は教授たちの許に呼び出された。それは、B29の捕虜8名を使った生体解剖実験を手伝えというものだった……。
静かで大いなる海。
始まる物語は、冒頭からすでに気味悪さがどんよりと迫ってくる。
戦争中に実際にあった米軍捕虜に対する生体解剖事件。
混沌の中で混乱が生じ、狂っていく人間たち。
自覚のない狂気。
どこからが罪でどこまでが許されることなのか。
判別すらできない状況下で翻弄される人々を医療機関を舞台に描いたサスペンス。
白黒映画だったということに救われたかもしれない。
色がないから一線を置ける。
近づきたくない妙な怖さがある。
これは、人間の善悪の判断をも鈍らせた戦争の代償ともいえる。
良心に苛まれる奥田瑛二。
まったく罪の意識を持たない渡辺謙。
二人の対比がこの異常さをむき出しにしていく。
戦争という理由をつけて生体解剖を行う。
誰もが麻痺している。
見失っている。
人間としての尊厳を。
他人の生死を決める権利は誰にもないのに。
そんな最低限人間が持っている物すらここには存在しない。
長く緊迫した手術のシーン。
見ているだけで血が引けて青ざめるような冷たい空気が流れる。
誰も止めれない。
どうしようもできない。
そんな戦争時代に生きなければならなかった人々の悲痛のよう。
ヒリヒリして痛い。
痛くて痛くて悲しい。
血の海をガーゼで埋めても埋めても埋まらない。
血は溢れるだけ。
それを止めてくれる良心は一体どこへ行ったのか。
本当の目的は医療の発達だけだったのだろうか。
生きる長らえるために犠牲にされる命。
どんな理由でも犠牲にしていい命などない。
海のように。
毒薬のように。
矛盾が犯す罪。
環境と状況で正当化する狂気。
それが人間の弱さであり恐ろしさ。
見終わってもなんとも言えない重さが私の体にのしかかった.....
ちぶ~的血、チッ度5
手術シーンで使われている血は本物らしい。岡田真澄の英語をはさんでくる取り調べは舌打ちするくらいイラッとする。主演二人の演技も含め、見応えはあるが....やっぱり重い。